「・・はぁ・・・」
もう1時間は経った
『マジで、これはまずい』
全くの予想外だった
「はぁ・・・」
道に迷った
--------<1時間前>--------
寒さを感じ始めた私は、祭り会場である大通公園から宿泊先であるホテルラフィナートに向かっていた
大通公園からホテルまではかなり近く、マップを見る限りでは徒歩10分以内の距離だった
しかし、道が滑りやすく中々スピードを出せない事と、雪の影響で景色が全て同じように見える錯覚に陥り、マップをちょくちょく確認する必要があったため、移動速度は格段に落ちていた
更にその上、寒さのせいか携帯の反応も悪く、マップでの自分の進行方向が逆を向いていたり、移動したはずなのにアイコンが移動していなかったりと踏んだり蹴ったり
完全に雪国に弄ばれていた
歩き始めて20分程だろうか。中々ホテルに辿りつけない私は、少々うんざりしながらも何度目かのマップを開く。現在地を確認すると、また大通公園に近づいていた
『わけわからんな・・・ん?』
ふと異変に気づく
『携帯の充電が35%?』
おかしい。
『さっき開いた時は65%だったはず・・・』
私の性格上、携帯をしまう時は一回一回きちんと画面を消している。当然ながらポケットにしまっている間は、電池を消費するようなことはしていない。何より・・・
『さっき開いたのは2分くらい前だろ』
不思議な現象に少々不安を感じながら、改めて現在地とホテルの位置を確認して画面を閉じる
それを最後に携帯の画面がつくことはなかった
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『遭難する・・・いやしてる?』
大通りから外れた道でそんな不安に駆られて周囲を見る
人もいないし、周囲は暗い。全てが同じ景色に見える。この札幌という大都会、人がつくりだした世界でこの状態なら
『山で遭難すると言うのは、こんなもんじゃないんだろうな』
整備された山以外は絶対いくまいと心に決めた。しかし、今はそれどころじゃない。もう1時間以上は彷徨っており、自分が通った場所さえ区別がつかない。コンビニで道を聞きたくてもコンビニが見当たらない。人もいない。
私は冷静になるべく、ひたすらゾンビのごとく歩き続けた自分を静止させた。そして、建物の軒下で2~3分の休憩を挟んで大通公園へ戻るべく歩みを進めた。
よくよく考えてみれば、旅行前には楽しみにし過ぎて何度もマップは見ていた。何ブロック先で曲がるとか、目印は何だとかは覚えていないが、駅-大通公園-ホテルの位置関係は大体頭に入っていた。それがわかっていれば、少なくても逆方向に進む失敗は避ける事ができる。
気持ちを切り替えた私は、自分が歩いた道を逆再生しながらなんとか公園へと戻ってきた。そして再度、携帯が生きていた時に通ったホテルへの曲がり角を進み、今度は1ブロック進んでの横移動を繰り返した。
ホテルはあった。というか、おそらく横を通り過ぎていた。看板は目立たなかったため、完全に見落としていたのだろう
機能していない携帯を取り出し時間を確認しようとするが、やはり電源は切れたままだ。
ホテルに入って充電して、原因について調べてみた。サラッとしか調べていないので詳しく理解はしていないが、どうやら携帯のバッテリーは化学反応によって電気を起こしているらしい。今回、あまりの寒さに化学反応がうまく行われずに、携帯が『電池切れ』と勘違いしたようだ。
携帯自体が購入から3年くらい経っているので、機能低下を起こしているのも一つの要因かもしれないが、携帯にまで防寒対策が必要であるとは全くの予想外である。そして、如何に携帯に依存しているかが浮き彫りとなった。