2018年10月 四国旅行記②-三津浜港~足摺岬-

旅行記

感傷に浸る間もなくフェリーから飛び立った私は、とりあえず一旦落ち着くために近くのコンビニへ寄った。

遅い夜食を済ませながら、足摺岬へのルートをナビで確認してみる。高速を利用しながら南下し、途中に無料道路などを通って行くらしい。

余裕だわ。250km無いくらいだし、SAで少し仮眠でもするか。

そんな感じで気楽に出発したのだが、出発してすぐにあった道路の電光掲示板をみて愕然とする。

通行止め

理由はわからないが、今いる松山から何個か先までの高速が通行止めになっていた。こうなると下道で行くしかないのだが、旅行前に確認した衛星写真では、松山から足摺岬まではほぼ山道だった。状態が万全なら400kmくらいは休憩しながら行けるが、仕事終わりな上に見知らぬ土地となるとそう上手くはいかない。

不安を感じつつ、考えても仕方が無いと思いそのまま進む。思えばこの頃は、まだ記憶が残っているので余裕があったのだろう。

2時間後

時刻は日付を跨いで1時過ぎ。三津浜港を出てから約90km地点の山の中。眠気は無いけど、疲労が出始めていた。道中の事はあまり記憶にないが、

↑宇和島 ○○km

という、数km刻みの謎の宇和島カウントダウンがあったのはハッキリ覚えている。その都度『うわぁ・・・全然進んでない・・・』と地獄にたたき落とされていた。なんなの?宇和島押しなの?

何度か休憩を考えたが、恐らく一度休憩したら次の運転がしんどいであろうことと、何より思ったよりも時間がかかっていることもあって、休憩ができない状況だった。

眠気は無いものの、ジワジワと蓄積する疲労と闘いながら、どうにか5:20に足摺岬へ到着。私の車と、無人車の一台のみだった。『7:00まで寝とくかなぁ・・・でも一時間程度ならむしろ寝るとキツイか』と考えながら、一度外の空気を吸いに出る。

ふと、後ろを振り向くと、木々の間から灯台が顔を出していた。

よし撮ろう

秒速の決断だった。

途端に元気になって、撮影の準備をする。当日は台風の影響と、早朝の海沿いとういこともあってか、かなり風が強かった

展望台へ向かう途中は暗く、何度かフナ虫に(;°Д°)!?となったものの、携帯の電灯で足元を照らしながら行く。展望台へ近づくにつれ、波の音がはっきりと聞こえ始める。まさしく、地の底から響き渡る様な轟音

暗過ぎて周囲が見えない。しかし、暗闇ながらも波の音でわかる高低差。風が出鱈目に強いため、三脚を使用しても揺れる。ISO値を上げて、露出時間を調整するが上手く撮れない。何度撮っても上手く撮れないので、一旦車に戻って仮眠することにした。

そして、6:40起床。

あまり休めた感じはしなかったが、朝日が昇り始めていたのでのそのそと撮影準備をする。外は相変わらず風が強い。しかし、このくらいの明るさなら露出時間は長くなくてもいけるだろうと思い、三脚は置いていく。周囲を見渡すと、車はやはり二台しかなかった。

1時間半前と同じ道を歩く

人の姿は全くないが、相も変わらずフナ虫がいる

より強まる風

展望台の階段を上がる

薫る潮風に、あらぶる波の音

さらに強まる風

展望台を上がると、目の前に朝日があった

広がる太平洋。延びる地平線。照らす太陽。

どれだけ疲弊していても、この時の経験は今でも鮮明に覚えている。

一瞬息ができなかった。そして大きく深呼吸をした後、ここまで溜めこんでいた様々な感情が一気に溢れ出るような感覚を覚えた。自然を相手にして、強烈な一撃を食らったのはこれが初めてだった。

この写真はA3にして家の壁に飾ってある。なんの変哲も無く、誰でも撮れそうな写真。だけど、技術や知識などどうでもいい。自分が感動した、ありのままの姿。この写真がきっかけで、私のカメラの撮り方が変わった気がする。どこがどう変わったのか明確にはわからないが、大なり小なり写真に想いを載せるようになったんじゃないかな、と思っている。