神社から標識の案内通りに紅葉谷へと向かう。道中に何度も鹿に遭遇して、その都度反射的に撮影してしまう。本当に多いなこの島。
紅葉谷に入って散策するが、まだ全体的ではなく部分的な紅葉である。しかし、私は全体を撮ることがあまりなく、特にカメラ小僧1年目は『引き算撮影』を意識していたので部分的な紅葉でも充分だった。
※引き算撮影:被写体を強調するために、いらないものをことごとく引いていく方法
ちょこちょこ移動しては撮影を繰り返すが、どうにも虫に食われている葉が多い。少し歩いたところで改めて周囲を見渡すと、ロープウェイ乗り場を示す看板があった。特に乗る予定は無かったが、せっかくなので乗りに行く。
山の形の関係だろうか、ロープウェイには途中で乗り換えがあった。私が行った時は営業直後だったため、一人一台ゴンドラに乗ることができた。従業員さんのグッジョブな配慮である。
結構長いため、本格的な紅葉が始まれば最高の景色になるだろう。
山頂に到着して、すぐ近くの展望台へ行く。晴れていたら四国まで見えるそうだが、あいにく早朝と言う事もあってモヤのようなものがあって見えなかった。
周囲を散策すると、弥山山頂という看板を発見。地理に疎い私にとっては聞いたことが無い名前だが、すぐそこに見えてるしちょっと寄っていくか程度の気持ちで登山。しかし、この認識は甘かった。
当時はかなり冷え込んでおり、私は厚着をしていた。しかも靴底の薄いスニーカーを履いていたので、重いわ暑いわ痛いわで、景色なんて撮影する余裕は全くない。
中継地点の寺に着いて、汗ダラダラになりながら休憩。そこには何百年も絶えず燃え続けている火があったが、撮れるような余裕はなかった。
2~3分休憩を挟んで、再び山頂を目指す。少し登ったとろで、そばの林からガサガサと音がした。マムシ注意の看板もあったので警戒したが、出てきたのは鹿だった。私はヒィヒィ言いながら登っているのに、この四足動物は息も切らさずに登ってきたのかと思いながら撮影をする。
2~3枚撮影したところで、ファインダー越しに奥の方でチラチラ何かが動いていることに気づく。下山客だった。迷惑をかけていると思った私は
すいません!どうぞ、いいですよ
と声をかけた
のだが
カメラを離すと同時に、人影は奥の岩に引っ込んでしまった。
誰もいない空間に響き渡る私の声。驚いた顔でこちらを見る鹿。見つめ合う鹿と私。
違う、お前に言ったんじゃない。
そう思いながら固まっていると、岩陰から再び下山客が顔をのぞかせる。
すいません、鹿を撮っているから邪魔しちゃいけないと思って
そう言って、また顔を引っ込める。モグラたたきかな?嬉しい言葉に感謝を告げつつ、御言葉に甘えてもう一枚撮影する。
お前はいつまで警戒してんだよ
その後は何事も無く山頂へ登った。ゆっくりとしたペースを意識したので、今度はそこまできつくなかった。
山頂に登った時にはモヤがとれていて、周囲を見渡すことができた。ただ、鳥居を見下ろせるという謳い文句があったけど、木の枝が伸びて丁度鳥居が見えなかったのは残念だった。
目の前の尖った所にロープウェイ乗り場がある。
山頂には景色以外は特に無いため、軽く休憩した後に下山した。